『小さな会社・儲けのルール』 by 竹田陽一、栢野克己

小企業のニッチ戦略を理論と実例で説明
小企業(明確には書かれてないが100人以下の企業)がとるべきポーターの競争戦略で言うところのニッチ戦略を「ランチェスターの法則」を使い、かつ、それぞれの個別戦略で具体的なポイントと共に実例をふんだんに盛り込んで示しています。特に、こういう戦略の本としては珍しく定量的な説明が多く、説得力があります。
特徴的なことは、商品+顧客(営業)の2つが押さえるべきポイントと判断し、その2つに絞り込んで企業戦略を示していることです。その他の組織戦略や財務・会計等については、意図的に言及されていません。
全体を通して、ランチェスターの法則をベースとして戦略が構築されています。このランチェスターの法則をきわめて簡単に説明します。この法則は戦い方とその攻撃力に関する法則です。
第一法則:攻撃力=兵力数×武器性能
第二法則:攻撃力=兵力数の2乗×武器性能
第一法則は、一騎打ち戦での法則です。ここでは、1対1でしか、戦わないため、その攻撃力は兵力に比例します。第二法則は、ライフル等の飛び道具を使った場合の攻撃力なります。この場合、1対1の戦闘ではなく、多対多の戦いとなり、攻撃力は兵力の2乗に比例します。
この法則から、小企業は兵力がないため、できるだけ、第一法則が通用する世界で戦いを行います。つまり、自分の力を一点に集中させて接近戦を行い、できれば相手のいない領域、もしくは、いても相手企業の分散された一部との戦いを行うことにより、第二法則が支配する世界と比較して相対的に有利な状態で戦います。そして、最終的な戦略目標して特定の領域内でシェアを取り、その分野での強者になることにより、第二法則を使用できる立場を目指します。
この理論をベースして、商品戦略、エリア戦略、客層(セグメンテーション)戦略、営業(マーケティング)戦略、顧客(CRM)戦略、時間戦略を展開します。
この中で、特に、興味深く感じたのが、時間戦略です。人生の成功公式して、以下の式を提示しています。
y = a × xの2乗 + b
y:人生の目標、a:才能、x:時間(努力・忍耐)、b:過去の蓄積
凡人は、aやbの値が大きくないので、xを大きくすべきと主張しています。つまり、長時間労働を行えと言っています。ただ、このxは、2乗で聞いてきますので、2倍の成果を出すためには、ルート2つまり、1.41倍の時間、働けばよいことになります。7時間を基準にして、結果を2倍、3倍、4倍、5倍の成果を出すには、それぞれ、10時間、12時間、14時間、15-16時間ということになります。ランチェスターの法則の研究によると、3倍で必勝、つまり、ほとんどの場合、勝てるようです。
この式が成り立つかの理論付けは明確ではありませんが、実社会での能力の戦いというと多面的な競争ということと(つまり、多対多の状況での戦い)、能力を脳細胞のネットワークに依存すると仮定すると成り立つような気がします。時間(努力・忍耐)の二乗に比例して成果が出るとすると、やる気が出ますよね。
小さな会社・儲けのルール-ランチェスター経営7つの成功戦略
著者:竹田陽一 、栢野克己、出版社:フォレスト出版
後悔度:★★★ (三つ星満点)
★★★:読まないと絶対後悔する、★★:とても後悔する、★:やっぱり後悔する


最後の「y = a × xの2乗 + b」で思い出しました。似たような理論がありました。それは、経験曲線効果というのがあり、その意味は「累積生産量が倍増するたびに、一定の比率で単位コストが減少する現象」というものです。つまり、製造業である特定の製品を製造すると、コストが指数関数的に減少します。式で表すと以下のようになります。
y = k × xのb乗
y:製品のコスト、k:定数、x:累積生産量、b:習熟率(-0.32~-0.74)
似ていますよね。製品のコストの逆数を価値の創造と考えると、式全体で逆数を取ります。
1 / y = 1 / k × 1 / xのb乗
Y = 1 / y、K = 1/k、と置くと
Y = K × xの(1-b)乗
b = -0.32 ~ -0.74
よって、
Y =K × xの(1.32~1.72)乗
なかなか、いい線いっています。経験曲線効果は、組織の学習なので、個人の学習は、もう少し、効率がいいとなると成り立ちますね。
なんか、作者に伝えたくなります。
経験曲線効果について、詳しくは、以下のWebページを参照してください。
http://pweb.sophia.ac.jp/~h-amikur/teaching/lecture/exp/experience1.pdf

コメント

  1. 偶然、拝見しました!
    「小さな会社★儲けのルール」を紹介いただき、ありがとうございました!

    ブログの本でも同席?させていただき、ありがとうございます!

    今後も頑張って下さい!

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