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テストテスト

『巨象も踊る』 by ルイス・ガースナー

実務的な経営者の顔がかいま見られる
本書は、私がいる業界の会社IBMの復活劇を描いています。今日は、少し、趣向をかえて、同じような会社がどのような進路を取るべきか考えてみました。
ポイント
随所にガースナー氏が考えるソリューション・インテグレーション事業における経営上のポイントが述べられている点が参考になる。そのポイントは、ソリューション・インテグレーション事業のビジネス・モデルは、製造業ではなく、小売・サービス業に近いということである。私達も、その点を明確に意識して事業に取り組む必要がある。
その観点から、3つのことを論じすることにする。まず、挙げられることが、「ビジネス・モデルの違い」、次に、「スタッフのスタンス」、そして、「高度なシナジー効果の追求」である。
ビジネス・モデルの違い
本書の181ページから始まる「賭の性格」で述べてあり、IBMの現在の中核事業であるシステム・インテグレーション事業のビジネス・モデルはサービス業であると明確に述べている。財務的な観点からみると分かりやすいと思う。
製造業の財務を固定費と変動費の二つからとらえてみと、固定費の割合が多く、売上が伸びて、損益分岐点を越えると急速に利益が上がる。しかし、売上がない巨額な赤字となる。これは、ソフトウェアにおけるパッケージと同様のビジネス・モデルである。俯瞰的に見ると、赤字の製品と黒字の製品がまだら模様で、全体として利益を確保している。
逆に、小売・サービス業は、変動費の割合が大きく、固定費のそれは少ない。そのため損益分岐点は低く、利益を出しやすい。しかし、その利益率は低くなる。これは、ソフトウェアにおけるシステム・インテグレーションと同様のビジネス・モデルである。俯瞰的に見ると、多くの案件から少しずつ利益をあげ、全体として利益を確保している。
事業戦略のウェイトとしては、製造業では設備投資がキーであり、小売・サービス業では日々のマネージメントがキーである。
戦略ドメインを構成する「顧客」、「技術」、「製品」で考えてみる。製造業のビジネス・モデルは、製品を重視する。それに対して、小売・サービス業は、顧客の要求の変化への対応や広い意味での技術において高い水準を求められる。
現状の多くの会社のシステム・インテグレーション事業は、製造業のモデルを引きずっているように見える。より、小売・サービス業的ビジネス・モデルに適応するには、顧客志向を追及すると共に、オペレーションに対しても、高めていく努力をする必要がある。
小売業のトップ企業であるセブン・イレブンでは、週に一度、鈴木会長の下で、業務改革会議が開催されており、現場の問題が討議されているという。トップが現場の個々の問題を通して、語り合う場所が必要ではないだろうか。これは、一例であるが、小売・サービス業の手法を積極的に取り入れることを検討する必要がある。
スタッフのスタンス
本書付録に、ガースナーと従業員のメールのやり取りが、掲載されている。そのメールの中(409ページ)で、次のように述べている。
『たとえば、スタッフ部門の人たちが、ライン部門の動きを監視し、問題の行動を摘発するのが自分たちの仕事と思っているのであれば、どのような管理制度もうまくいかない。しかし、スタッフ部門の姿勢がこうであれば、「自分の仕事は会社のすべての能力が顧客と接する人たちに向けられるものとすることだ。ビジネスで勝利するように支援するのが自分たちの役割だ」というのであれば・・・』
会社のスタッフの動きを見ていると逆の動きにみえてしまう。非効率的、メリハリがいなく、網羅的な監視が強まっているように感じる。本来の目的を失っている監視のための監視に映る。非効率的、メリハリがいなく、網羅的な管理は、同一の品質が要求される製造業では、ある意味、適合しているように思える。
小売・サービス業は、個々の顧客の事情が最優先する。また、利益を出すために、非常に高いオペレーションを要求される。そのため最適なプロセスを現場で、組み立てる能力が求められる。そのため、押し付けの作業標準を高いレベルのものであれ、最終的には、最適化することが求められる。
よって、上からの押し付けではなく、個々の作業標準やツールを部品化して、組織体制としては、それをいかに現場に適用するかについての専門家や専門的組織を育成する方向が必要に思える。
高度なシナジー効果の追求
英語で、本書のタイトルである「巨像も踊る」と同じである「第26章 巨像が踊れないとはだれにもいわせない」が、本書の中核部分である。
ここでのテーマは、「如何に、企業規模を生かすかという」という点に集約されている。三段階の水準の統合があり、まず、第一段階は、データ処理、購買、基本的な人事制度などの共有であり、「規模の経済」の追求である。次の第二段階は、顧客情報の共有であり、共通の顧客データベース、共通の受発注システムなどがあり、総合的な情報を顧客サービス担当者に提供するものである。最後の第三段階の統合については、「もう、一冊本を書かなければならなくなる」とし、初歩的な事のみ論じている。
明確には理解できないが、全社の資源を用いて顧客に統合的なサービスを提供するように解釈できる。そのためには、セクショナリズムに陥ることなく、かつ、広い視野で全体最適化を図る必要がある。組織的には、他のIBM関連の資料をみると、機能組織的な事業部制ではなく、各部門をまたがったプロジェクト組織もしくはマトリックス組織のように思える。
まとめ
システム会社の課題は、小売・サービス業的ビジネス・モデルを意識した高いオペレーションの能力を組織としてどう構築していくかにあると考える。そのためには、IBMは、一つのモデルを提供している。ただ、IBMの流儀をそのまま適用しても、二流のIBMになるだけであるから、先進的な日本の小売業の仕組みを取り入れることが、IBMを超える一つのヒントになると考える。
巨象も踊る
< strong >著者:ルイス・ガースナー、出版社:日本経済新聞社
後悔度:★★★ (三つ星満点)
★★★:読まないと絶対後悔する、★★:とても後悔する、★:やっぱり後悔する




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