インターネットを貫く根本原理
この本は、とにかく面白かった。ここ数ヶ月に読んだ本の中で、一押しです。300ページある本ですが、一気に読めました。「なぜあの商品は急に売れ出したか」(元の原書のタイトルがよかったような)の理系版という趣で、関係ないと追われていた事象が徐々に一つの共通な体系にしたがっていることが分かる過程はスリリングです。
冒頭の舞台は、サントペテルスブルグの数学者の話から始まります。ハングリーの文学者の六次の隔たりという人々を結びつけるリンクの一つの仮説、それを実証したアメリカ人の研究、そして、インターネットの構造、経済学の有名な研究、物理学の量子学、エイズ・ウイルスの伝播、体の中の化学反応が次々とつながって行きます。
その合間に、筆者の専門分野である主にインターネットを題材としたネットワーク構造の研究成果を織り交ぜて、盛り上げて行きます。このネットワーク構造の研究は、まだ、始まったばかりのようですが、豊穣な成果を期待してしまいます。
もう少し具体的な内容をかいてみます。
六次の隔たり
地球上の任意の人と知り合いを何人間に入れれば、繋がると思います?なんと、これが平均して5.5人目で繋がるそうです。1964年に、実際にアメリカで実験が行われて確認されました。これを六次の隔たりというそうです。おもしろいですよね。実験方法は、ある人に知らない他人に手紙をリレー式に渡していくというのでした。ただ、よく考えるとこれは最短と思われる人に渡るとは限らないので実際はもっと短いと考えられています。更に、現在ではインターネットを始め人の活動範囲が広がっているのでこれより短い距離になっているだろうと述べられています。
ハブの存在
比較的初期には、インターネットは漠然と民主的なネットワークと考えられていました。つまり、自分の意見を公開すると平等に他人から読まれるようなネットワークだと思われていたのです。しかし、時が経つにつれて、特定のハブにはリンクが集中し、他方、ほとんどリンクを持たないページか多数存在するようになりました。これがインターネットを特色づけるものでした。どうして、発生するかは、[1]ネットワークが成長するのと[2]リンク先がよりリンクが多い先に優先的に集まることから説明できます。
いろいろなネットワーク
生物内での化学反応ので、物質をノード、化学反応をリンクと考えるとインターネットと同じようにハブが存在していました。他にも、ハリウッドの俳優のネットワーク、科学者の論文を通じてのネットワーク等の人のネットワーク、エイズ、ソフトウェア、果てはテロリストのネットワークも同じ特性を示します。すごく、ワクワクしてきません?
インターネットで何かしようと思ったら、是非読むことを勧めます。
新ネットワーク思考-世界のしくみを読み解く
著者:アルバート・ラズロ・バラバシ、出版社:日本放送出版協会
後悔度:★★★ (三つ星満点)
★★★:読まないと絶対後悔する、★★:とても後悔する、★:やっぱり後悔する
新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く