『考える技術』by 大前研一

先週、予告していた大前研一氏の新刊の書評です。ゲラ原稿を、かなり以前に、スタッフの方からいただいていて、何度も、読み返してしまいました。氏の経営コンサルタントとしての現場での働きぶりが想像できるような臨場感を感じます。
本書の前半は、「論理思考」のポイントを解説しております。後半は、この「論理思考」で、『新・資本論』で述べられている「見えない大陸」における法則を使い大きな仕掛けをする方法が述べられています。後半での「IBMを倒す快感」などの言葉に代表される視点が気持ちいいのです。
実際のビジネスの場面に使用しやすいと思われる前半の「論理思考」のポイントを紹介します。
「論理思考」というと机上で、データ分析を行い、仮説を導き出すという、ある意味、記号の操作的なイメージが私にありました。ところが、氏は、データ分析結果である仮説を立てるだけは不十分だと述べます。その仮説が本当であるかの裏付けが必要だと説きます。
その裏付けは、具体的には、それを実証する個々の現実、具体的には、例えば、営業マンに会いインタビューなどを通して、その背景にある原因を特定します。その原因から派生する結果の因果関係を理論的に説明できるかを検証していきます。
そして、その原因は、通常、一つのことから派生します。その一つを特定する作業をフィールドワークという地味な作業を通して、浮かび上がらせます。多くの人は、現象(結果)と原因を区別できません。
例えば、売上が伸びない時に、現象を捉えて、それらが原因のように考え勝ちです。その現象とは、「営業マンに元気がない」、「製品が悪い」、「価格が高い」などです。「営業マンに元気がない」のは、「売上が伸びない」ということから引き起こされた結果かもしません。「製品が悪い」というのは、成績が悪い営業マンの単なる言い訳にすぎないかも知れません。「売上が伸びない」という真の原因を探し出す必要があります。
現象を捉えて、それぞれに、独立した一貫性のない対策を実施すると最悪な結果になる場合があります。例えば、「製品の付加価値を向上」させ、「価格を下げる」という施策を同時にとれば、「利益が出ない」という最悪な結果になります。一つの真の原因を見つけ出し、一貫性のある対策を実施する必要があります。
そして、重要なのは「仮説」ではなく、「結論」です。結論とは、与えられた目的に対応して、それに最適な結果を出せるような「結論」です。よくないコンサルタントは「その問題は難しい」という結果を出せないレポートを提出する場合があります。実際に、実施して、結果のあるレポートでなければ意味があません。
更に、私が潔いとおもうことは、提言も一つであることです。最終的に、社長にその提案した「結論」を実施してもらう場合、あれもこれもということは、現実には難しいのです。膨大なデータ収集・分析、フィールドでのインタビューなどに裏打ちされた一つの提言は、実行させる迫力があります。
また、コンサルティング依頼に対しても、「何がやりたいんですか?」と目的に一つにして、依頼を受けます。一つの目的に対してしか、明確な答えを出せないのです。
私は、前半の「論理思考」についての部分を読んでいくと、大学で行った実験レポートを思い出しました。個々のデータから、緻密に、最終的な結論を組み立てていくそんな作業なのです。その実験データを元にした論理構成を経営コンサルティングに応用した手法から導き出される結論は迫力があります。
■■ 今日のエッセンス
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■■ 大切なことは、仮説ではなく、結果をだす結論です。
■■ 提言は、データ・事実に裏付けられた一つに絞り込みます。

考える技術
著者:大前研一、出版社:講談社、ISBN:4062124920

後悔度:★★★ (三つ星満点)
★★★:読まないと絶対後悔する、★★:とても後悔する、★:やっぱり後悔する

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