トリンプは、以前から気になる会社でした。それは、会社員として、不合理な環境で働いている時に、その合理的な考えた方と楽しさを羨ましく感じたからです。残業は評価されず、会議は短時間で結論を出し、高密度の仕事で短時間に仕事を片づけて、家庭・健康第一という、会社員の共感を呼ぶ考え方です。
この『革命社長』を読んで、社長である吉越浩一郎氏の合理的な考え方はともくかく、18期連続黒字という結果に対する尊敬の念を覚えました。
本書は、四つの側面から、『革命社長』の吉越浩一郎氏を紹介しています。仕事を楽しく、社員をイキイキさせる、会社を伸ばす、商品が愛されるという四つです。
まず、「仕事を楽しく」という面ですが、基本的に、仕事をゲームという事で割り切っています。遊びという意味のゲームではなく、制約条件がある中で、如何に、最大限の結果を出すこという意味です。それが端的に表れているのが、「年間2000時間以上働いて数字を出すのは面白くない」という趣旨の発言です。
死ぬときに、「人生が楽しかった!」と思うことを目標に考えると、仕事だけの人生はつまらないと吉越浩一郎氏は考えています。フランス人を人生のパートナーに持っているため、かなり、フランス人の考え方の影響を受けています。また、ゲームを勝ち抜くためのロジカルな思考はドイツ留学時代に身につけたようです。
ロジカルな思考の一端で、面白く感じたものがあります。役員は情報共有が大切なので大部屋での仕事、社員は個々の実務を能率良く実行するために個室を与えた方が良いのではないかという考察です。
次に、「社員をイキイキさせる」は、会社がおかしくなるのは内部からという考えから、社員、特に若い社員や女性社員の活用に力を入れています。小悪魔ブラの開発を担当した新入社員の例や広報部門の女性活用の例が示されています。
小悪魔ブラの担当者は新入社員でした。その社員は、就職活動時、メーカー系会社での新商品開発希望でよい返事をもらえなかった経験を持っています。それがトリンプでは希望すれば、社長自ら企画の提出を促し、有名なMS会議で取り上げられると、全社的なバックアップを得られます。
女性社員の活用は、基本的に男女の区別をしないことだと言い切っています。そして、若いうちから積極的に登用すれば答えてくれるのです。トリンプでは、残業がないので時間的な拘束が少なく女性に非常に働きやすい環境を提供しています。
それに答えるかのように、トップが女性の広報室では広告費に換算して、27億円もの効果を上げています。商品規格課の課長も女性で、主力製品の開発に携わっています。
そして、「会社を伸ばす」ということは、会社内で考えかたや意見を一つの方向にするということをねばり強くするという事が大切です。
そのために、早朝会議という場は、その手段に向いています。特に、「みんなでやる」というやり方を好む日本人には向いています。なぜなら、顔を合わせて場を共有することにより、安心感が得られるからです。オープンに会議をすれば、根回しもいらなくなります。
トリンプに吉越浩一郎氏が参加した当時、会社の業績が悪く、官僚主義やセクショナリズムが蔓延る職場で、危機感も役員の間でさえも共有されていませんでした。商品も魅力に乏しいものでした。
それが、数年も早朝会議を行うことにより、小さな成功事例を積み重なることにより、「しょうがないそうしよう」という合意が生まれ始め、徐々に業績が回復していきました。
早朝会議では、一時間で70ものテーマをこなします。そして、仕事を細分化して、基本は翌日までの締め切りに分解します。最大、一週間、大きな仕事はスケジュールを提出して、要所要所でチェックを行います。「誰が、何を、いつまでに」を確認します。締め切りが短いのは熱いうちに打つことを重視しているからです。
最後に、「商品が愛される」のは、商品に対する小さい不満を解決し続ける姿勢と、本社の蓄積された本場のノウハウを活かしていったためです。
下着自体、非常にデリケートな製品なので、小さな不満は沢山あります。それをひとつずつ解決していく努力を続けると、お客様にも伝わります。例えば、アンダーバストがかゆくなるのを改善したり、なで肩でも落ちにくいストラップをつくれないかということです。
「不満リスト」を使用して、マーケットリサーチをしています。項目を細かくして、各項目を数値化しています。不満解決が女性の支持を得る商品作りのすべてなのです。
ヨーロッパには、何百年もの洋服の歴史があり、トリンプ本社の下着職人としてのノウハウが蓄積されています。それは、縫製時の特殊な技術になります。一切、外部にださない門外不出な技術です。特許を出すとその技術自体は公開されてしまうので、特許にすらしないものです。
この縫製技術が、「縫製がしっかりしている」、「型くずれがしなくて品質がいい」という評価につながってきます。
仕事をゲームととらえる合理的な考え方、若い人・女性を活かす社内の体制、早朝会議でおこなわれる意思統一とその速さ、商品の不満点を地道につぶしていく努力がトリンプの魅力を形作っています。
■■ 今日のエッセンス
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■■ 仕事をある制約条件下で最大のアウトプットを出すゲームと考える。
■■ 早朝会議は日本人に特に会社全体の合意を掲載する場として役立つ。
◆革命社長
著者:吉越浩一郎、出版社:日本実業出版社、ISBN:4534039239
後悔度:★★★★★
★★★★★:読まないと絶対後悔する、★★★★:読まないと、とても後悔する、★★★:読まないと、やっぱり後悔する、★★:読まないと、後悔する気がする、★:読まないと、後悔するかな?
革命社長 | |
吉越 浩一郎
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本田晃一さんのブログはまる
インターネットの初期の頃に、ゴルフ会員権をインターネット上で販売し、多くのメディアに取り上げられた本田さんがブログを書いています。
http://blog.livedoor.jp/hondakochan/
ホームページを如何にして、自社の営業マンにするかというものです。単なるノウハウの提示ではなく、本田さんの投げかけにより、読者がコメントで回答するというやりとりが面白いです。
もちろん、ノウハウも、非常に納得感が高いです。
ちなみに、『ブログ成功バイブル』のブロガーパーティにも、参加されていました。少しだけ、お話ししまた。目がきらきらして、少年のようでした。
超カンタン! 最強メディア ブログ成功バイブル
百世 瑛衣乎