平成経済20年史 by 紺谷 典子

●「改革」という名の破壊
細川改革、橋本改革、小泉改革と平成は
改革のオンパレード。
ずいぶんいろいろな改革を進めたのに、
生活は一向に改善しない。
日本経済の地位も低下し続けた。
改革とは逆に、日本経済の低迷と、
国民生活の不安の原因になったとしか思えない。
改革と言われると、反対するのは難しい。
改革に反対だというだけで、「守旧派」
「抵抗勢力」とされてしまう。
しかし、結果はどうだったか?
「橋本改革」は金融不安をひきおこし、
日本をデフレ経済に陥れた。
「小泉改革」は、弱肉強食の市場淘汰を
押し進め、格差を拡大し、地方の疲弊と
自殺の増加を招いた。郵政民営化で、
便利になったと感じている国民がどこかに
いるだろうか。
本当に国民のための改革なら、
改革オンパレードだった平成の20年間、
国民生活が改善されなかったのはなぜなのか。
改革は本当に改革だったのか。
この20年を振り返ると明らかなことがある。
改革が進めば進むほど、経済が悪化したという
事実である。橋本改革がそうだった。
小泉改革は、もっとそうだ。
日本の長い低迷は、改革に原因があるらしい。
本書は筆者が平成の20年間の経済政策と
その結果を時系列で分析されております。
混迷を極める現在だからこそ、一度その
混迷の本当の原因は何だったのかを
考えることも時には必要ではないでしょうか。
(1)本当は所得が2倍になっていたはず
平均的日本人の所得は、この20年ほとんど
横ばいだ。それでも、多くの人は、それを
不満に思っていない。こんなものだと思っている。
でも、それは、重大なことを知らされていないからだ。
世界の平均所得が、20年間で2倍以上になったという
事実である。
中国やインド、ロシア、ブラジルなど新興国経済の
話だけではない、先進国クラブであるOECD加盟国の
平均も、ほぼ世界平均と同じなのである。
伸び盛りをすでに過ぎた先進老大国でさえ、
日本よりずっとましなのだ。
はっきり言って、平成が異常なのである。
世界の動向を知らなければ、現状に疑問を
持たないのも無理もないが、平成の20年間の
経済は、過去の日本と比べても、世界平均と比べても
きわめて異例、大例外なのである。
国内を見る限り悪化しているとは思わない。
しかし、世界はその間に2倍以上に成長し、
その結果、世界の中での日本経済の相対的地位は
恐ろしく低下した。
国民一人当たりの経済力は18位まで落ち込み、
世界経済に占める日本オン割合もかつては18%
あったのが、ついに10%を割った。
(2)デフレスパイラルと「合成の誤謬(ごびゅう)」
当てにもならない景気対策をポカンと待っている
事業主など、どこにもいない。皆、必死で
努力しているのだ。
必死でこぎ続けねば倒れる自転車のような状態に、
多くの企業と家計がおかれている。
しかし、努力すればするほど、景気が悪化するのが、
デフレスパイラルの特徴なのである。
売り上げが落ち、利益が出なくなった企業はリストラする。
従業員の数を減らす。仕入れを抑え、経費を節約する。
結果、失業者が増え、取引先の売り上げを落とし、
回りまわって、また自分の売上を落とすことになる。
家計も節約する。お父さんのお給料が減れば、
お母さんは節約する。商店街やスーパーや
デパートの売り上げが落ち、回りまわって、
また、お父さんの会社の業績が悪化する。
スパイラルとは「らせん」という意味である。
らせん状にどこまでも経済縮小が続くデフレの
悪循環が生じているから、デフレ・スパイラルなのである。
節約やリストラは、コスト引き下げで改善をもたらすかの
ように思えるが、需要不足の経済では、結局、更なる
需要の不足、経済の悪化をもたらすだけなのだ。
経済学で言うところの「合成の誤謬」である。
一人一人にとっては合理的な行動だが、
全体が、同じ行動をとることによって、
逆に非合理な結果を導いてしまう。
国民の努力ではどうにもならない不況だからこそ、
政府が需要を増やす政策が必要なのである。
それを、バラマキとしか認識できないのは、
経済の現状を理解できていない証拠である。
(3)作られた財政危機
日本の財政赤字が巨額であることは、
いまや小学生でも知っている国民的常識だ。
現在は、日本の債務残高は、GDPの160%になり、
「OECD加盟国の中で最悪」と言われている。
大蔵省(現財務省)は不思議なことに
「債務残高」を「財政赤字」と表現していた。
当然のことながら、債務と赤字は同じではない。
債務がどんなに大きくても、それを上回る資産があれば、
問題ではないからだ。
債務が大きいだけで危機だと言うなら、
通常、大会社ほど債務も大きいから、
大会社ほど財務状況が悪いということになってしまう。
実は、日本は他国に例のないほど、巨額の資産も
持っている。処分可能な資産を考慮に入れて、
日本の純債務、本当の財政赤字を計算すれば、
日本の財政赤字は大きくはない。
むしろ、財政優良国といっても良い状況だったのだ。
債務から処分可能な資産を引いた残りの「純債務」で
財政状況を判断するのが、世界の一般的なやり方である。
また、日本国債のほとんどが国内で消化されており、
日本は経常黒字である。
●改革幻想にとらわれた20年
この20年は改革幻想にとらわれた20年だった。
改革を裏で主導してきたのは、財務省である。
「改革」と言われてきたものの多くが財政支出の
削減でしかなかったことを見ても、それは明らかだ。
小泉改革の「官から民へ」は行政責任の放棄であり、
「中央から地方へ」移行されたのは財政負担だけだった。
「郵政民営化」は、保険市場への参入をめざす
米国政府の要望である。
改革のたびに日本人の生活が悪化してきたのは、
不思議なほどである。
本来、改革は、国民生活の改善をめざすものである。
国民生活の悪化は、、改革が国民のためのものでは
なかったことを示している。
米国と財務省が主導する「改革」をやめれば、
国民生活も、日本経済も良くなるはずである。
筆者の主張が強い本です。経済について世間一般的な
認識とは違う視点も持ちたいという方におすすめの本です。
◆『平成経済20年史』
著者:紺谷 典子
出版社:幻冬舎新書
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