●経営者意識を高める究極の仕組み
京セラが成長してきた要因のひとつには、
アメーバ経営という優れた経営管理システムの
存在があげられるが、これは人の心があって
はじめて機能するものである。
どんなに合理的な経営管理システムがあったとしても、
それを活用するリーダーやメンバーにやる気がなければ、
目標を実現することはできない。
すばらしい採算制度があるから、現場の採算が向上
するわけではない。現場のメンバーが、何としても
採算を向上させたいと思うからこそ、自らの意志で
高い目標にチャレンジし、採算が向上していくのである。
経営を勉強している方には”アメーバ経営”を聞いたことが
ある方はたくさんおられると思います。会社の中を”アメーバ”
という独立採算組織に分け、採算管理をすることでアメーバ単位で
採算意識を高め、高収益企業を実現されております。
しかし、この手法を単純にほかの企業が導入しても
おそらくうまくいきません。前述のようにリーダーや
メンバーのやる気も必要です。
また、自分のアメーバだけが儲かればほかのアメーバが
損しても良いという発想であれば会社全体としてプラスになりません。
本書は京セラ創業者である稲盛氏がアメーバ経営の背景にある
思想や仕組みを文書化した貴重な一冊です。
アメーバ経営自体の理解したい方は実際にお読みいただくとして、
印象に残った点をご紹介させていただきます。
(1)人間として何が正しいか
創業当時、何を基準に判断すべきか、頭を悩ます日々が続いた中で、
「人間として何が正しいのか」ということにもとづいておこなわ
なければならないことに気づいた。
われわれが一般に持っている倫理観やモラルに反するようなもの
では、長期的にうまくいくはずがない。
だから、両親や祖父母から、子供のころに叱られながら教わった
「人間として、やっていいこと、悪いこと」というベーシックな
基準で判断していこうと思った。
それは、公平、公正、正義、勇気、誠実、忍耐、努力、親切、
思いやり、謙虚、博愛、というような言葉で表される、
世界に通用する普遍的な価値観である。
私は経営に無知であったがゆえに、いわゆる常識というものを
持ち合わせていなかったので、何を判断するにも、物事を
本質から考えなければならなかった。
だが、そのことがかえって、経営における重要な原理原則を
見出すもとになったのである。
この原理原則を常に社員に求めることでアメーバ間の
調整を行っておられるとのことです。
(2)筋肉質経営の原則
アメーバ経営では、ムダな経費をなくすことが強く
求められている。そのためには、会社は筋肉質で
なければならない。
筋肉質とは、ムダな贅肉が一切ない、引き締まった
体質であることを意味する。
すなわち、利益を生まない在庫や設備といった
余分な資産を一切持たないことである。
不良資産が発生しないよう、長期滞留在庫を厳しく
管理している。
また、設備投資による減価償却費や人件費などの
固定費も知らず知らずのうちに肥大化するため、
増加しないように細心の注意を払っている。
原材料などの購入において「当座買いの原則」
というルールを設けている。使う分だけを当座買い
すると、いまあるものを大切に使うようになるため、
ムダがないし、余分の「在庫」がないため、在庫を
管理するための経費、場所や時間も必要なくなり、
結果的には経済的である。
さらに、市場の変化が激しいため、在庫を持って
いれば、商品仕様の変更によって、同じ部材を
使えなくなるというリスクもある。
(3)製造部門の採算に市場価格の変動が反映
私は、実際にモノをつくる製造部門こそが
利益の源泉であると考えており、製造部門が
市場情報をダイレクトに受け取り、それを
生産活動にすぐ反映させるべきだと考えている。
そこで、市場価格の動きが社内の製造部門の
アメーバの収入に直接連動するよう、お客様への
売上金額をそのまま製造部門の収入に相当する
生産金額となるようにした。
一方、製造部門とお客様の仲介をおこなう
営業部門は、売上に対する一定率を口銭
(手数料)として製造部門から受け取り、
それを収入としてとらえることにした。
●売上を最大に、経費・時間を最小に、
売上を最大に、経費を最小に。
当たり前のようだが、この原則こそ、世間の常識を
超えた、経営の真髄といえるものである。
一般の企業では、「こういう業種では、利益率はこんなものだ」
という暗黙の常識を基準に経営をしている。業界の常識をベースに
して、実績がそれを満たせば「よくやった」ということになる。
ところが、「売上げを最大に、経費を最小にする」という
原則からすれば、売上はいくらでも増やすことができるし、
経費も最小にすることができるはずである。
その結果、利益をどこまでも増やすことができる。
また、売上を伸ばすには、安易な値上げをするのではなく、
「値決めは経営」の原則から、お客様が喜んで買って
くださる最高の値段を見つけ出すことが重要である。
経費を減らすときも、「これが限界」と感じてあきらめる
のではなく、人間の無限の可能性を信じて、限りない努力を
払うことが必要である。
この原理原則にもとづき、全従業員が綿々と努力を
積み重ねることにより、企業は長期にわたり高収益を
実現できるのである。
加えて、アメーバ経営では、各アメーバが「時間当たり」という
時間当たりの付加価値を向上させようと日々努力しています。
そして、アメーバの「時間当たり」は毎月オープンに公開
されております。
また、リーダーには「時間当たり」がいくら以上なら
自分たちの人件費がカバーできているか、黒字かどうかを
常に把握できる仕組みになっております。
アメーバ単位で、経営者感覚を持った人材育成ができる
大変ユニークな経営管理システムです。
また、財務会計とは別の、社内用の採算管理のための
管理会計システムであるとも言えます。
本書では実際に使われている時間当たり採算表も公開
されており、具体的な方法も理解できます。また、
その前提となる経営哲学も最初に述べられております。
内部管理手法でお悩みの経営者におすすめの一冊です。
◆『アメーバ経営』
著者:稲盛 和夫
出版社:日本経済新聞出版社
後悔度:★★★
★★★★★:読まないと、絶対、後悔する
★★★★ :読まないと、とても後悔する
★★★ :読まないと、やっぱり後悔する
★★ :読まないと、後悔する気がする
★ :読まないと、後悔するかな?
◆詳細&購入
アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役 | |
稲盛 和夫
おすすめ平均 |
ゲスト書評家として、岩橋 亮さんをお招きしました。
岩橋 亮さんの自己紹介:
『行動なくて読書の価値なし』をテーマに中小企業経営に役立つ
実践的なビジネス書・自己紹介書を紹介している書評ブロガー
中小企業経営に役立つビジネス書・自己啓発書レビュー
ゲスト書評家を希望の方はこちらをご覧ください。
■編集後記
◆iPhone+Pro HDR
iPhoneの新しいOS、iOS4.1では、
デジカメにHDRという機能が追加されました。
HDRをいろいろと調べてみると、アート的な写真も、
撮影できるようでした。
ただ、iOS4.1の標準機能では、アート的な絵には、
出来ないようでした。
いろいろと調べてみると、「Pro HDR」という
iPhoneアプリではいろいろと遊べそうでした。
で、出来たのがこの写真達です。幻想的な写真になりました。
↓幻想的な写真は、こちらをクリック!
http://ameblo.jp/tulipa990/entry-10656660119.html
沖縄の宜野湾マリーナで、夕方の景色です。