●会社は金がなくなった時、倒産する
会社の再生は2つに分類される。
1次再生と2次再生である。
1次再生とはいわば外科手術であり、
財務リストラや借入金のリスケジュールを
通じて、財務内容の健全化を目指すものである。
簡単に言えば、お金の「出」と「入」の
バランスを直して、入ってくるお金で経営が
賄えるようにすることである。
ほとんどの再生企業はこの1次再生を
超えられない。理由は簡単で、お金が
続かなくなるからである。
運良く1次再生を乗り切れると、ほとんどの
経営者は「これで危機は去った!」などと
寝ぼけたことを口走る。
これは誤りで、「当面の危機は去った」が正しい。
体に巣食った病巣は除去したが、体質改善を
行わなければまた同じ病に侵されてしまうのだ。
この体質改善が2次再生である。
つまり、2次再生とは内科治療であり、
二度と経営を傾かせないために経営そのものの
問題点の抜本的な見直しと改善を行うことである。
1次再生と2次再生が完了して初めて再生が
終わるのだ。
この体質改善には様々な要素があるが、
建設業についての主だったものを列挙すれば
次の通りとなる。
・工程管理
・工事予算管理
・資金繰り管理
・工事原価管理
・戦略的営業
・労務管理
・短期・中期経営計画 などなど
本書は建設業の再生について、具体的な手法が
紹介されております。
当レビューでは建設業だけでなく、他の業界でも
ヒントになる部分をご紹介します。
(1)無借金経営は決して夢じゃない。
私が再生のお手伝いをした中には、
年商24億円・毎年の赤字5000万円・借金8億円が、
4年目で年商55億円・黒字5億円・借金なしになった
会社もあるのだ。
どんな会社だって5年あれば理論上はほぼ無借金に
できるものである。方法は簡単である。
5年間絶対に金を借りず、返済だけすればよいのである。
この間に借金をせずとも資金がショートしない仕組みを
作ることができれば、無借金経営は可能ということでは
ないか。あながち不可能な議論ではない。
その仕組みに必要なものは、借入返済を含めた月々の
支払資金を賄える工事代金である。この工事代金の
入金が毎月あれば、資金のショートは起きない。
つまり売上げさえ確保できれば、無借金経営への
スキームは描くことができるのだ。
金が足りないから借りるという思考方法から
離れていただきたいのだ。
(2)CL会社になろうじゃないか
CLとは顧客ロイヤリティのことである。
会社は、自分が想定する顧客に対して、
品質・サービス・安全・安心・付加価値等を
提供し、それらの要素が1つとなって顧客
それぞれが勝手にイメージする「企業ブランド」が
形成される。
企業ブランドが確立し、広く認められれば、
顧客は無意識にそのブランドに対して信頼感を持ち、
無意識に購買をしたり、取引するのが当たり前となる。
そして、その購買や取引が習慣化し、日常化した時に
「顧客を囲い込んだ」と言えるようになり、この状態を
「CL状態」と名付けている。
似た言葉に「CS」(顧客満足)、「CD」(顧客感動」がある。
冷静になって考えてほしい、あなたは満足したならば
リピート客になるだろうか。感動したら再来店するだろうか?
決して満足や感動だけの要素では二度か三度のリピートはしても、
長続きはしないはずだ。
満足や感動で客を集めようとすれば、永遠にそのレベルを高め
続けなければならない。そこには必ず限界があり、行き詰まりがある。
リピートには「自分が何度も再利用すること」と
「自分の口コミで他の人が行くこと」の2つの意味がある。
ビジネスモデルを構築する際には、前者を囲い込むと同時に、
後者の連鎖が起こるようにしなければならない。
(3)学生症候群
工期の短縮を実行するには、まず最初に現場で何が
起きているのかを知らなければならない。
学生の頃、夏休みは宿題なんぞどこ吹く風。
親も親で、勉強しろなんて言わないものだから
やりたい放題遊んでいた。
しかし、今も昔も変わらぬものがある。
それは1日の長さ。ずーっと昔から24時間。
当然時間はあっという間に過ぎ去り、夏休みは
残りわずかとなる。ここで、「はっ!」と気がつく
のである。
宿題をまだやってない!
カレンダーを見ると、どう考えても間に合わない。
日焼けして真っ黒だった顔は、一瞬にして真っ白に
なってしまうのである。
学生症候群とは、人間切羽詰まらないと本気で
やらないということだ。
工期が3・4ヶ月あれば、最初の頃はまだ時間が
あるからと比較的のんびりとした雰囲気が現場にある。
工程はかなりの安全余裕を見積もっている。
この安全余裕の組み方の発想を変えることが
工期短縮につながる。
●工期短縮プログラムの目的
ある会社は、プログラムの導入で1年間で上げていた
売上が、8ヶ月間で達成できた。短縮された4ヶ月の
職人さんに対する人件費は全部利益となるため、
社長はその半額を職人さんに給与として支給することにした。
このプログラムは単に工期を短縮することが目的ではない。
工期を短縮することにより得られる工事原価低減分の
利益や売上増加による利益を営業力を強化するために
使用していただきたいのだ。
営業力強化のカギは第一に顔が見える工事だと思っている。
第2に、CL会社にならなければ本当の意味での顧客指示は
得られない。
単に利益のみを追求するために工期を短縮した場合、
手持ち工事がなくなるという状態になる。
営業力を強化し新規工事の受注量を増加させ、
短縮して得られた時間を有効活用することにより
皆さんの会社が勝ち組になることを切に願う。
工期短縮プログラムの詳細はレビューでは十分に
伝えられませんが、考え方の図解が多く、具体的に
説明されております。
また、実際に工期短縮で成功した企業の実例を
後半で詳細に書かれております。
学生症候群による見えない時間の無駄は
どの企業にも存在する見えない無駄ではないでしょうか。
◆『建設業の社長さん、今すぐ工期短縮を始めなさい!』
著者:長瀬 幸彦
出版社:カナリア書房
後悔度:★★★
★★★★★:読まないと、絶対、後悔する
★★★★ :読まないと、とても後悔する
★★★ :読まないと、やっぱり後悔する
★★ :読まないと、後悔する気がする
★ :読まないと、後悔するかな?
◆詳細&購入
建設業の社長さん、今すぐ工期短縮を始めなさい!―時間の中に眠る利益をこの手に | |
長瀬 幸彦
おすすめ平均 |
ゲスト書評家として、岩橋 亮さんをお招きしました。
岩橋 亮さんの自己紹介:
『行動なくて読書の価値なし』をテーマに中小企業経営に役立つ
実践的なビジネス書・自己紹介書を紹介している書評ブロガー
中小企業経営に役立つビジネス書・自己啓発書レビュー
ゲスト書評家を希望の方はこちらをご覧ください。
◆苫米地英人さんの本
Amazonでみると、今年は、既に16冊も出しているんですね。
2冊ほど購入しました。
『テレビは見てはいけない』
テレビは見てはいけない (PHP新書) 苫米地 英人 PHP研究所 2009-09-16 |
『なぜ、脳は神を作ったのか?』
なぜ、脳は神を創ったのか? (フォレスト2545新書) 苫米地英人 フォレスト出版 2010-06-04 |
ぶっ飛んでいますね。
本自体は、楽しめます。