●欧米と変わらない日本の消費税の水準
「日本の消費税は5%で、主要国と比較して非常に低い。
これでは社会保障の財源が出ない。少なくとも10%以上に
引き上げなければならない。」
これは、政府与党、御用学者、マスコミなどが協調して
国民に宣伝し、国民をマインド・コントロールにかける
ための殺し文句である。
しかし、日本の消費税額が国税全般に占める比率や
消費税の課税対象から見て、日本の消費税率は決して低くはない。
<主要国の国税収入全体に占める消費税の割合>
・イギリス 17.5% → 22.5%
・ドイツ 18.0% → 27.0%
・イタリア 20.0% → 27.5%
・スウェーデン 25.0% → 22.1%
・日本 4.0% → 22.1%
※日本は5%のうち、1%は地方税
なぜ、日本は税率が低いにもかかわらず、国税に占める
消費税の税率が欧米各国と変わらないのか。ここに2つの
問題がある。
1つは、日本の消費税は非課税項目(消費税がかから
ないもの)が極めて少ない点が挙げられる。
欧州各国の付加価値税には非課税対象として、
教育、医療、住宅取得とその関連の不動産・金融があり、
また生活必需品(食料品、医薬品、新聞、書籍の一部)は
軽減税率ないし非課税のものが多くある。
アメリカでも生活必需品はほとんど無税である。
つまり、欧州での消費税は贅沢税的な性格を持つ。
2つは、税収全体に占める税種目を見ると、
日本の場合には法人税と所得税の比率が低すぎる。
とくに1999年以降、「構造改革」で日本経済が
破壊されてしまったために、法人税と所得税の税収が
激減し、消費税のウエートが高まっている。
1990年度から2006年度までに法人税率は40%から30%に下がり、
所得税は高額所得者に減税、低額所得者に増税、20%の定率減税は
廃止され、消費税は3%から5%に上がっている。日本は主要国で
低所得者の税金が最も高い国となったのである。
本書は『文藝春秋』「エコノミストは役に立つのか」
エコノミスト格付けで堂々第1位に選ばれた筆者が、
すべて政府が公表したデータを使って、日本の
財政事情を説明し、国民がこれ以上騙されないように
するための情報を明らかにしています。
さらに、現在、日本がどうすればよいかの
具体的政策を提言されております。
一般的にメディアで説明される識者の見解に対して、
具体的に問題点を提起されております。
どうすれば景気がよくなるかを考えたい人におすすめの一冊です。
(1)海外では「日本が財政危機だ」と思っている人はどこにもいない
「日本は財政危機だ。増税もやむない」
「日本は838兆円もの債務を抱えており、これは
GDPの160%にものぼる危機的な数字だ」
これが日本国内での一般的な考えだ。しかし、海外ではこうだ。
「本社から『アメリカの政府や学者が、日本の財政危機を
どう思っているのか報告してほしい』という指示がきた。
そこで、日本研究などで知られる学者や識者に聞いてみて、
驚きました。誰一人として、日本が財政危機だとは思って
いないのですよ!」(日本の大手新聞の駐在記者)
「日本銀行は国債の買取を増やし、減税あるいは公共投資を
行うべきだ。自分のカネでできるではないか」
(ベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会議長)
「日本は財政危機ではない、経済政策を間違え続けている
ことこそ、真の危機だ。』(欧米の金融関係者)
「日本は多額の金融資産を持ち、それを自分の国のために
使わないから、長期間、景気が低迷し、財政赤字が増えて
いるのであって、財政危機は偽装ではないか。日本はもはや
反面教師だ」(東アジア諸国の要人)
この認識のズレはどこから生じているのだろうか。
日本の財政は黒字である。
日本は海外に300兆円を超えるおカネを貸し出しており、
世界一の金持ち国家が財政赤字で困っていると宣伝してみても、
笑止千万だからである。
「日本が財政危機を煽るのは、増税をするための策略だ。
日本の税率は年金保険料や福祉関連支出を入れると、
アメリカよりも高く、増税する必要はない。もっと景気を
よくする政策をとることだ。」
(コロンビア大学・ワインシュタイン教授)
(2)消費税は贅沢税、貧しい人に負担させるべきではない
消費税を最初に唱えたトーマス・マンは、
「消費税は豊かな者に負担させるべきであって、
貧しい人に負担させるべきではない。」
と明言している。
「消費税を社会保障の目的税とする」
ことは、かえって国民負担を重くし、結局、
社会保障費を抑制することになる。
消費税の引き上げは、決して社会福祉のためにならない。
「社会保障の財源確保のために、消費税を引き上げたい」
という主張は、「構造改革」で経済を破壊し、税収が
上がらない経済にしてしまったので、そのツケを国民に
回すために、国民の「健康と命」を人質にして増税の
抵抗感を薄める理由づけに過ぎない。
(3)いま日本で実行すべきは「クリントンモデル」
大幅な財政赤字を5年間で解消させたクリントン大統領の
財政政策は、われわれに多くの教訓と示唆を与えている。
「財政再建」とは、名目GDPを増やす財政政策を
とって、政府の純債務のGDP比率を下げることである。
それには、景気対策をとって、国民の雇用を増加させ、
有効需要を増加させることで投資と消費を増加させていく。
その結果、名目GDPが増加して税収が増えるので、
国債発行額は減っていく。
クリントンは政治主導でこうした正攻法を取り、
景気を拡大させていったのである。
●日本経済復活の「五カ年計画」
第一に、制度面からのデフレ要因を根絶する。
「基礎的財政収支均衡目標」と「金融行政三点
セット(ペイオフ、時価会計・減損会計、
自己資本比率規制)の適用を凍結・廃止すべきだ。
第二に、国家の基本ビジョンを「輸出大国」から
「社会大国」に転換すべきである。
そして、具体的には政府投資の30兆円と
減税枠の10兆円(投資減税、定率減税復活、
消費税減税)を合わせた40兆円を景気対策として
毎年実施し、とりあえず、5年間にわたって継続
させるのである。
景気が回復していくと、3、4年目からは税収の
増加額でおカネが政府に戻ってくるので、財源は
ほぼ120兆円~130兆円あれば十分であろう。
こうした財政支出をするための財源は、
政府にも民間にもいくらでもある。
1.特別会計の埋蔵金100兆円を一般会計の
投資項目に振り向ける
積立金、剰余金、繰越金、外貨準備の運用益
2.「内需創出国債」を80~100兆円発行する
アメリカ国債に投資されている国民の預貯金を使う
3.個人向けに無利息の「デフレ脱却国債」を20兆円以上発行する
個人向けの新規国債として「無利息非譲渡性の預金」と同じ
形式の5年物の国債を発行し、原則5年間継続で保有してもらう。
購入者には5年後に無税扱いの10%の褒賞金か、
同額の相続税の税額控除を受けられる得点を与える。
以上のようにして得られた資金を政府投資に回し、
経済が活性化すれば、名目GDPも増加して雇用が増え、
税収も増加する。結果として、政府債務の国民負担率が低下し、
国債残高も減ることになる。
◆『消費税は0%にできる』
著者:菊池 英博
出版社:ダイヤモンド社
後悔度:★★★★
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◆詳細&購入
消費税は0%にできる―負担を減らして社会保障を充実させる経済学 | |
菊池 英博
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ゲスト書評家として、岩橋 亮さんをお招きしました。
岩橋 亮さんの自己紹介:
『行動なくて読書の価値なし』をテーマに中小企業経営に役立つ
実践的なビジネス書・自己紹介書を紹介している書評ブロガー
中小企業経営に役立つビジネス書・自己啓発書レビュー
ゲスト書評家を希望の方はこちらをご覧ください。
■編集後記
◆インターネット・マーケティングを極める本10冊
コンサルティングで、オススメの
インターネット・マーケティング本を聞かれたので、
選んでみました。
全然、マーケティングを知らない人が、楽しみながら知らず知らずのうちに、
知識を身につけられるように、10冊を選びました。
やさしい本から読めるように、その読む順序も考えて、選びました。
10冊は多いと思っているかも知れませんが、難しい本をいきなり読むのは、
いきなり高い階段を上るようなモノで、普通の人は出来ません。
無理のない高さの階段を楽に上るほうが、早く、ゴールにたどり着けます。
こちらで、紹介しています。
http://bit.ly/d0MDqi